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分類:食肉目クマ科 シートン大友の百獣画録 第57話「大統領とクマ」  このシリーズでクマが登場するのは、第8話のツキノワグマ、第21話のホッキョクグマ、第51話のナヌラーク(ホッキョクグマとグリズリーの雑種)に続いて4度目です。今回の主役はアメリカクロクマ。第8話で「月の輪模様がある個体もいる」と少しだけ触れた、あのクマです。しかし今回は月の輪の話ではありません。このクマにまつわる、ある大統領とのエピソードをお話しさせて下さい。  アメリカの第26代大統領セオドア・ルーズベルト(1858~1919)は、狩猟家としても知られた人物でした。ある日、彼がクマ狩りに出掛けたのですが、一日中歩き回った末に1頭もクマを見つけることが出来ず、手ぶらで帰路に就くことになりました。アメリカの大統領ともあろう男がクマ1頭仕留められなかったという噂が立っては大変だと考えた彼の側近達は、あるアメリカクロクマを大統領の前に連れ出し、彼に撃たせようとしたのです。このクマが弱っていた年寄りだったのか子グマだったのかは説が分かれていますが、いずれにせよ、まともに抵抗出来ない状態の動物でした。第19話のバイソンは「誰かを困らせるため」に殺され、第53話のオオカミは「家畜を守るため」に狩られました。このクマは「大統領の面子を守るため」に差し出されたわけです。  ところが、ルーズベルト大統領はそのクマを撃ちませんでした。「この状態のクマを撃つことはスポーツマン精神に反する」と言って、銃を下ろしたのです。第18話のゴリラは「凶暴そうで穏やか」な動物でしたが、この場面で穏やかだったのは大統領でした。そしてこの話が新聞で紹介されると、ニューヨークのあるお菓子屋の夫妻が、大統領の愛称を名前にしたクマのぬいぐるみを作りました。これこそが、世界で最初の「テディベア」です。  第53話で、赤ずきんちゃんの物語がオオカミのイメージを悪者に塗り替えたと書きました。物語の力は、動物の運命を変えてしまうことがあります。オオカミの場合、それは不幸な方向に働きました。しかしクマの場合は逆でした。大統領がクマを撃たなかったという実話が新聞に載り、それがぬいぐるみになり、テディベアは世界中の子供達に愛される存在になったのです。また第18話のゴリラはキング・コングの映画で凶暴なイメージを植え付けられましたが、クマはテディベアのおかげで「抱きしめたい動物」の代名詞になりました。・・・もっとも、本物のクマは子グマでもない限りは抱きしめようとしたら大変なことになりますので、抱きしめるのは極力ぬいぐるみだけにしておいた方が良いでしょう。
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分類:食肉目クマ科 シートン大友の百獣画録 第57話「大統領とクマ」  このシリーズでクマが登場するのは、第8話のツキノワグマ、第21話のホッキョクグマ、第51話のナヌラーク(ホッキョクグマとグリズリーの雑種)に続いて4度目です。今回の主役はアメリカクロクマ。第8話で「月の輪模様がある個体もいる」と少しだけ触れた、あのクマです。しかし今回は月の輪の話ではありません。このクマにまつわる、ある大統領とのエピソードをお話しさせて下さい。  アメリカの第26代大統領セオドア・ルーズベルト(1858~1919)は、狩猟家としても知られた人物でした。ある日、彼がクマ狩りに出掛けたのですが、一日中歩き回った末に1頭もクマを見つけることが出来ず、手ぶらで帰路に就くことになりました。アメリカの大統領ともあろう男がクマ1頭仕留められなかったという噂が立っては大変だと考えた彼の側近達は、あるアメリカクロクマを大統領の前に連れ出し、彼に撃たせようとしたのです。このクマが弱っていた年寄りだったのか子グマだったのかは説が分かれていますが、いずれにせよ、まともに抵抗出来ない状態の動物でした。第19話のバイソンは「誰かを困らせるため」に殺され、第53話のオオカミは「家畜を守るため」に狩られました。このクマは「大統領の面子を守るため」に差し出されたわけです。  ところが、ルーズベルト大統領はそのクマを撃ちませんでした。「この状態のクマを撃つことはスポーツマン精神に反する」と言って、銃を下ろしたのです。第18話のゴリラは「凶暴そうで穏やか」な動物でしたが、この場面で穏やかだったのは大統領でした。そしてこの話が新聞で紹介されると、ニューヨークのあるお菓子屋の夫妻が、大統領の愛称を名前にしたクマのぬいぐるみを作りました。これこそが、世界で最初の「テディベア」です。  第53話で、赤ずきんちゃんの物語がオオカミのイメージを悪者に塗り替えたと書きました。物語の力は、動物の運命を変えてしまうことがあります。オオカミの場合、それは不幸な方向に働きました。しかしクマの場合は逆でした。大統領がクマを撃たなかったという実話が新聞に載り、それがぬいぐるみになり、テディベアは世界中の子供達に愛される存在になったのです。また第18話のゴリラはキング・コングの映画で凶暴なイメージを植え付けられましたが、クマはテディベアのおかげで「抱きしめたい動物」の代名詞になりました。・・・もっとも、本物のクマは子グマでもない限りは抱きしめようとしたら大変なことになりますので、抱きしめるのは極力ぬいぐるみだけにしておいた方が良いでしょう。
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