分類:奇蹄目ウマ科
シートン大友の百獣画録 第39話「クアッガは蘇った?」
第13話で、シマウマに馬車を引かせる流行がヨーロッパにあったことをご紹介しました。あのとき、絶滅したシマウマの一種「クアッガ」が馬車を引かされていたという悲しい記録にも触れました。馬車を引かされた挙句の絶滅。あのときは脇役として名前が出ただけでしたが、39話目にしてようやく、クアッガに主役の座を用意することができました。
クアッガは、かつて南アフリカのケープ地方の草原に生息していたシマウマです。ただし、私たちがよく知るシマウマとは見た目がかなり違いました。全体的に茶色がかった体で、縞模様は首から肩にかけてだけ。下半身にはほとんど縞がありません。第36話で、シマウマの縞模様の正体が「虫除けスプレー」だったと判明しましたが、クアッガの縞が途中までしかなかったのは、クアッガが暮らしていた地域にはツェツェバエがあまり生息していなかったからだと考えられています。虫除けが必要ない環境なら、虫除けスプレーも最小限で済む。・・・第36話の結論が、絶滅したシマウマの姿まで説明してしまいました。
このクアッガは、肉や毛皮を狙った乱獲によって絶滅してしまいました。第11話のキタシロサイは角を狙われ、第19話のバイソンは「誰かを困らせるため」に殺されました。クアッガの場合は、肉と毛皮という、もっと直接的な理由です。人間が動物を滅ぼす理由は様々ですが、どれも動物の側には何の落ち度もないという点だけは共通しています。ところが、絶滅から百年以上が経ったある日、意外な事実が明らかになりました。クアッガの剥製に付着していた肉片をDNA鑑定で調べたところ、クアッガは独立した種ではなく、現在も生き残っているサバンナシマウマの一亜種だったのです。つまり、近い親戚がまだ生きていたということになります。
この発見をきっかけに、ある壮大な計画が動き出しました。縞模様が比較的少ないサバンナシマウマ同士を選んで交配させ、世代を重ねることでクアッガの姿を復元しようという試みです。こうして生まれたシマウマ達は、計画の発案者レイノルド・ラウにちなみ「ラウ・クアッガ」と呼ばれています。第11話のキタシロサイは、残された雌から卵子を採取し体外受精で種を存続させようとしていました。あちらは「同じ種の最後の遺伝子を残す」戦いです。一方、クアッガの復元は「別の個体から見た目を寄せていく」試み。方法も意味も、まるで違います。・・・ラウ・クアッガは確かにクアッガに似ています。しかし、姿が似ていれば同じ動物と言えるのでしょうか。第34話のレオポンは「そもそも存在してよかったのか」という問いを残して消えていきました。クアッガの場合は「これは本当にクアッガなのか」という問いが残ります。第13話で馬車を引かされ、乱獲で絶滅し、そして今度は人間の手で「復元」される。・・・クアッガという動物は、どこまでも人間に振り回され続けているようです。