分類:食肉目ハイエナ科
シートン大友の百獣画録 第15話「サバンナの嫌われ者」
前回、ライオンの名誉を回復したばかりですが、今回はその名誉に少々傷がつくかもしれません。主役はハイエナ。サバンナの嫌われ者です。卑しい死肉漁り、他の肉食獣から獲物を横取りする日和見主義者――世間のイメージはおおむねそんなところではないでしょうか。しかし、このイメージには重大な誤解が含まれています。
最大種であるブチハイエナは、実は群れで大型の獲物を仕留める有能なハンターです。東アフリカでのある観察によると、ブチハイエナが食べていた獲物のほとんどが自力で狩ったものだったそうです。テレビでよく見る光景を思い出して下さい。ライオンが獲物を食べている横で、ハイエナの群れがうろうろしている、あの場面です。あれは横取りしようとしているのではなく、ライオンに奪われた自分達の獲物を取り返そうとしていることがあるのです。・・・前回「王と呼ばれるだけのことはある」と持ち上げたばかりなのですが、王にも少々後ろめたい食卓事情があったようです。
さらにハイエナは、ライオンやトラ以上に顎の力が強く、胃酸も桁違いに強力です。他の肉食獣には食べられない骨や腐った肉も平気で消化してしまいます。第5話でパンダの偏食ぶりをご紹介しましたが、ハイエナはその正反対。出されたものは動物性タンパク質なら何でも食べる、いや、出されなくても骨まで残さず平らげる。動物界の偏食家と動物界の何でも屋、飼育員さんにとってどちらがありがたいかは言うまでもありません。
こうして見ると、「嫌われ者」という評判はずいぶん不当なものだと分かります。自力で狩り、横取りされても諦めず、骨まで無駄にしない。むしろ堅実で逞しい生き方です。嫌われているのは、ハイエナ自身のせいではなく、人間が勝手に作り上げたイメージのせいなのでしょう。・・・もっとも、ライオンとしては「横取りの件は忘れて欲しい」というのが本音かもしれませんが。