分類:食肉目ハイエナ科/鯨偶蹄目ウシ科
シートン大友の百獣画録 第75話「お隣さんを捕食?」
第15話で名誉回復を試み、第44話で名誉が怪しくなり、第62話で毛針を食べてさらに遠のき、第70話では雄の肩身の狭さを見たハイエナの名誉回復シリーズも五回目になりました。今回は名誉回復に近付くのか、それとも遠のくのか。・・・結論から申し上げますと、遠のきます。以前、動物園の飼育員さんが執筆した古本を読んだとき、ハイエナについてこう書かれていました。「相手が自分よりも弱いと見ると、つけ上がって襲ってくるチンピラのような性質がある」と。しかも最近の研究で、ハイエナの賢さの度合いがチンパンジーを上回っていることが判明しています。第26話のチンパンジーは「穏やかそうで凶暴」な猛獣でしたが、そのチンパンジーを上回る賢さに肉食獣としての獰猛さが加わるのですから、侮れない存在であることは間違いありません。
その侮れなさを裏付けるように、昔の日本の動物園でハイエナが隣の檻や同じ檻に入っていたお隣さんを食べようとした記録が残されています。まず、ブチハイエナが隣の檻にいたクマの前足を食いちぎったという記録。第8話でクマの月の輪模様をご紹介しましたが、あのクマの前足を檻越しに食いちぎるとは、顎の力の強さもさることながら、隣人に対する遠慮というものが一切ありません。次に、シマハイエナが檻に侵入してきた放し飼いのクジャクを食べたという記録。第62話で毛針まで食べた悪食家ですから、目の前に飛び込んできたクジャクなど朝飯前だったのでしょう。
しかし3つ目のエピソードでは、シマハイエナにも手痛い失敗があります。一時期同じ檻に入っていたヤクに、3頭の群れぐるみで喧嘩を売ったのです。ところがヤクの角攻撃であっさり返り討ちに遭い、それ以降はヤクに逆らわなくなったとのこと。第70話で「ブチハイエナの雄は群れの中で子供よりも格下」と書きましたが、シマハイエナは種類は違えど強いヤクの前でも同じように大人しくなってしまったわけです。相手が弱いと見ればつけ上がるが、強いと分かれば即座に引く。・・・これもまた、チンパンジーを上回る賢さの表れなのかもしれません。
第15話で「嫌われ者のイメージは不当だ」と弁護し、第44話でハイエナバター、第62話で毛針、第70話で肩身の狭い雄と、名誉回復の道のりは長くなる一方です。今回お隣さんまで食べようとしたとなると、さらに遠のいたと言わざるを得ません。しかしヤクに返り討ちに遭ってからは大人しくなったというのですから、学習能力は確かにある。・・・名誉回復はまだ遠いですが、少なくともヤクの隣では行儀良くしていたようです。