【短編小説】安楽の村【あとがきのみ有料】|薬
安楽の村 与作は子どもながらに口喧嘩が強かった。おまけに世渡りも上手いときている。 与作の村は楽園だった。山上からの澄んだ湧き水が、村のすぐそばを音を立てて流れている。魚も捕れる。畑もあって、不作以外では食うに困らない。労働さえ輝かしい日常の、あるいはまた大自然の一部であった。 ある夏、太陽が真上に届いた頃、水汲みに行く与作の前に、見慣れぬ格好の男が現れた。与作の知らない衣をまとい、角ばった荷物を持っている。父親と同い年くらいの男は、にこやかに与作に話しかけた。 「こんにちは。君はここの集落の子どもかい?」 「ん。おっちゃん誰」 柳と名乗ったその男は、この村の歴史を調べに遠路
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