市場構造の変化と通信サービスのデジタル化が進む中、モバイルボイスオーバーインターネットプロトコル(mVOIP)は、単なる音声通話技術から、ビデオ通話、メッセージング、ファイル共有、CRM連携などを統合するデジタルコミュニケーション基盤へと役割を拡大しています。QYResearchが発表した最新市場調査レポート「モバイルボイスオーバーインターネットプロトコル(mVOIP)―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」によると、世界のmVOIP市場規模は2025年に96360百万米ドル、2026年には112680百万米ドルに達し、2032年には317100百万米ドルまで拡大すると予測されています。2026~2032年の年平均成長率(CAGR)は18.8%と見込まれており、モバイル通信、クラウドサービス、企業向けコミュニケーション、IoTなどの需要拡大を背景に、高い成長ポテンシャルを有する市場と位置付けられます。
mVOIP世界市場規模と成長見通し
mVOIP市場では、スマートフォンの普及に加え、高速モバイルネットワーク、クラウドコンピューティング、OTT型通信サービスの拡大が市場成長を支える主要因となっています。特に5Gの普及は、音声だけでなく動画、画面共有、リアルタイムデータ連携など、通信品質とインタラクティブ性を重視するサービスの拡大を後押ししています。
2026年6月に公表されたEricssonの最新データでは、2026年第1四半期時点で世界の5G契約数は31億件に達し、2026年第1四半期だけで1億6200万件増加しました。また、2025年末時点で5Gネットワークは世界のモバイルデータトラフィックの48%を処理しており、2031年には85%まで上昇すると予測されています。こうしたネットワーク高度化は、mVOIPを含むリアルタイム通信サービスの利用基盤をさらに強化する要素となります。
QYResearchの調査では、2025年の市場規模96360百万米ドルを基準として、2026年112680百万米ドル、2032年317100百万米ドルへと拡大する市場シナリオが示されています。18.8%という高いCAGRは、従来型音声通信からIPベース通信への移行だけでなく、通信機能を業務システムやデジタルプラットフォームへ組み込む需要の拡大を反映したものと考えられます。
4つの分析軸から見るmVOIP市場構造
本レポートでは、mVOIP市場を「製品タイプ」「用途」「企業」「地域」の4つの軸から整理し、市場規模、成長要因、競争環境、導入障壁を総合的に分析しています。
① 製品タイプ別:統合型コミュニケーションへの移行
対象製品は、Video Sharing、Screen Sharing、File Sharing、Video and Voice Calls、Instant Messaging、CRM Integration Services、Virtual Number Serviceです。
従来のmVOIPは音声通話を中心としたサービスとして利用されてきましたが、現在は音声・動画・メッセージング・ファイル共有を一体化した統合型コミュニケーションへの移行が進んでいます。特に企業ユーザーでは、通話機能単体ではなく、顧客管理、コンタクトセンター、営業支援、オンライン会議などとの連携性が導入判断に影響するため、CRM Integration ServicesやVirtual Number Serviceなどの付加価値型サービスが重要性を増しています。
さらに、モバイルネットワークをAPI経由で活用する動きも強まっています。GSMAによると、2026年時点でGSMA Open Gatewayには86の通信事業者グループが参加し、300以上のネットワーク、世界のモバイル接続の約80%をカバーしています。ネットワーク品質、本人確認、位置情報などをAPIとして利用可能にする動きは、今後のmVOIPと企業向け通信サービスの高度化にも関連する重要な潮流です。
② 用途別:IoT・VoIPを中心とした需要拡大
用途別では、IoT、VoIP、Othersに分類して分析しています。
IoT領域では、音声通信を人と人とのコミュニケーションだけでなく、人と機器、機器とサービスを接続するインターフェースとして利用する可能性が広がっています。一方、VoIP用途では、企業の通信コスト最適化やリモートワーク、クラウド型コミュニケーションサービスの普及が需要を支える要素となります。
特に企業市場では、単純な低価格通信ではなく、音声品質、セキュリティ、CRM連携、複数デバイス対応、通信履歴管理などを組み合わせた統合サービスへのニーズが高まっています。Ericssonも企業通信について、モバイル音声とコンテンツ共有、ビデオ会議、プレゼンス管理などを組み合わせた統合型サービスへの移行を指摘しています。
5G・AI・ネットワークAPIが変える競争環境
mVOIP市場の競争軸は、従来の「通話料金」から「通信品質+サービス統合+ネットワーク機能+セキュリティ」へと移行しつつあります。
5G SAやネットワークスライシングの普及により、特定用途に対して通信品質を制御する仕組みも実用化が進んでいます。2026年6月時点で、5G SAを商用展開する通信事業者は90社を超えており、ネットワークスライシングを活用した差別化型接続サービスも拡大しています。
一方、AIの導入によって音声通信の付加価値も変化しています。リアルタイム翻訳、音声分析、自動応答、不正通話検知、本人確認など、AIを組み込んだ通信サービスは、mVOIP市場に新たな収益機会をもたらす可能性があります。2026年にはAIを活用したリアルタイム通話管理サービスも登場しており、音声通信の安全性と信頼性を高める技術開発が進んでいます。
主要企業の競争ポジション
本調査では、BigAnt Office Messenger、Cisco Jabber、HipChat、IBM、Facebook、Kakao Talk、Line、Skype、Viber、Vonage、Tencentを主要企業として取り上げています。
各社について、市場シェア、製品ポートフォリオ、競争戦略、技術導入、提携・投資、地域展開などを比較することで、mVOIP市場における競争ポジションを明確化しています。
今後は、単独のmVOIPアプリケーションだけでなく、クラウド型UC、CPaaS、コンタクトセンター、デジタルコマース、IoTプラットフォームなどとの統合能力が競争力を左右するとみられます。特に通信事業者、クラウド事業者、アプリケーションベンダー、企業システムインテグレーター間の連携が、市場拡大の重要な要素となります。
地域別市場動向と事業機会
地域別では、北米、アジア太平洋、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東・アフリカを対象に、市場規模、需要特性、規制環境、成長ドライバーを比較しています。
北米ではクラウド通信や企業向けデジタルサービスとの統合が重要となる一方、アジア太平洋ではスマートフォン普及、デジタルサービス拡大、モバイルインターネット利用の増加が市場浸透を支える要因となります。欧州では通信規制やデータ保護への対応が重要であり、中南米、中東・アフリカでは通信インフラの高度化とデジタルサービスの普及が中長期的な成長余地につながります。
したがって、mVOIP事業者がグローバル展開を進める際には、単一のサービスモデルを各地域へ展開するだけでなく、通信インフラ、規制、ユーザー行動、課金モデル、現地パートナーシップを組み合わせた地域別戦略が不可欠です。
mVOIP市場における技術課題と今後の成長ポイント
mVOIPの成長を持続させるためには、通信品質、遅延、接続安定性、セキュリティ、プライバシー、相互運用性などの技術課題への対応が重要です。特にリアルタイム音声・動画通信では、ネットワーク状態の変動による遅延やパケット損失がユーザー体験に直結するため、5G SA、エッジコンピューティング、ネットワークスライシングなどとの連携が今後の重要テーマとなります。
また、ネットワークのオープン化も市場構造を変える可能性があります。GSMAは2026年7月、標準化されたNetwork APIが企業によるモバイルネットワーク機能の利用を容易にし、本人確認、位置情報、通信品質などをデジタルサービスへ組み込める環境を整備していると説明しています。
この変化は、mVOIPを「通信アプリ」から「ネットワーク機能と企業システムを接続するサービス基盤」へ進化させる可能性があります。今後の市場参入企業にとっては、音声通信技術そのものだけでなく、API、AI、クラウド、セキュリティ、業務アプリケーションとの統合力が重要な差別化要因になると考えられます。
QYResearchレポートの分析内容
本レポートでは、2021~2025年の市場動向を基礎として、2026~2032年の市場予測を実施し、世界mVOIP市場の市場規模、成長率、セグメント構造、主要企業の競争ポジション、地域別市場動向を体系的に分析しています。
企業の市場参入判断、競合分析、製品ポートフォリオの設計、地域展開、提携戦略、成長投資の検討などに活用できるよう、定量データと定性分析を組み合わせた構成となっています。特にアジア太平洋地域では、日本および東南アジアを含む個別データ分析やカスタマイズ調査にも対応可能です。
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QYResearch株式会社は、2017年に東京で設立された市場調査会社であり、各種業界を対象とした市場規模分析、業界ポジション評価、フィージビリティスタディ、競争環境分析、事業計画策定支援などの調査・分析サービスを提供しています。
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