会場:青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)ギャラリーA
日時:12月12日(土)15:30(約1時間)
撮影・編集:KAZUYA ISHIKAWA
神村恵は、身体を物質、言語や他者との関係など様々な側面から観察し、再構築する作品を制作しているダンサーであり振付家です。青森では昨年オルタナティブスペースのblanClassで発表した《彼女は30分前にはここにいた。》を発展させ、ソロのダンス作品の制作と公演、ワークショップを実施しました。
《彼女は30分前にはここにいた。》#2 では、自然光の入る会場で、日没前後の時間帯にその光や環境の変化を背景として、パフォーマーが自身の痕跡を残す行為を重ね、それらの行為に応答し続けていくという、時間と存在のあり方に関する作品のコンセプトはそのままに、青森県内のリサーチで見たこと、感じ考えたことにより、新たな振付けが生まれ上演されます。
神村は青森で、小屋や縄文遺跡、文学や芸術作品など、古今この地で暮らす人々が形作ってきたものを観察し、日常生活における身体の動きにも関心を向けました。それらはすべて、他者の痕跡とも捉えられます。
里山にある炭焼き小屋、漁師の浜小屋、りんご畑の小屋、日曜大工の趣味を楽しむ小屋、美術家がアトリエとした小屋などは、それぞれの用途に特化しており、また本人や親しい人しか出入りしないという気楽さからか、他者の目で見ると奇想天外な物の配置で溢れています。セルフビルドの小屋は、規則や制限に縛られず、自分のアイデアと技術で必要な場所を用意する行為だと言えるでしょう。
日常生活において意識することは少ないですが、我々は自らも含め人が生み出した様々な物によって、そしてその配置によって、時空間における動きを規定=振付けされているとも考えられます。可視化されるはずのない無数の痕跡を、神村恵の身体は描き出し、そしてその行為もまた、ある物事があったしるしを残し続いていきます。
ワークインプログレス公演や、その後も続けたリサーチ、ギャラリー空間と身体を通して向き合った時間によって、本公演ではより神村の小屋に対する意識が明確に表れました。鈴木正治氏の作品《誕生》やアトリエ、木の股を利用した建て方、ドストエフスキーによるテキストの音読、リノリウムのマットや懐中電灯を用いた動きはより練られ、小屋から派生して自由と想像力、想像力と表現の関係性などダンスの哲学へと問いは敷衍したようです。上演をワークインプログレス公演と分けることで、日没時間の早まりといった環境の変化、その日のダンサーの身体と物の相好性などが浮き彫りとなりました。