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学習塾経営・鈴木貴さん 静かに月日重ね…亡き娘への思い変わらず いわき民報社震災15年特集【海とわたし】より
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荒川涼子
ライター・フォトグラファー
記者・ライター
震災15年 学習塾経営・鈴木貴さん 静かに月日重ね…亡き娘への思い変わらず | 株式会社いわき民報社
潮風が吹く平沼ノ内の一軒家。学習塾経営・鈴木貴さん(50)は朝、海を見にいくのが習慣になっている。海は刻々と表情を変える。しかし、自ら海の水に触れることは、ほとんどない。津波で当時10歳だった長女姫花さんと、母親を失ったあの日からずっと。
https://iwaki-minpo.co.jp/news/2026/03/311117/
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学習塾経営・鈴木貴さん 静かに月日重ね…亡き娘への思い変わらず いわき民報社震災15年特集【海とわたし】より
潮風が吹く平沼ノ内の一軒家。学習塾経営鈴木貴さん(50)は朝、海を見にいくのが習慣になっている。海は刻々と表情を変える。出勤の際は少し遠回りをし、薄磯海岸から塩屋埼灯台下を通って向かう。「晴れていても荒れてても海はきれいだなぁと思います。スマホで写真を撮る日もある。高校生のころからずっとこの辺に住んでいて、この場所が気に入ってもいるんです」。しかし、自ら海の水に触れることは、ほとんどない。津波で当時10歳だった長女姫花さんと母親を失ったあの日からずっと。貴さんにとって海は近くて遠い、存在になった。 貴さんはJRいわき駅周辺の公営住宅で育った。シングルマザーの母、兄と3人暮らし。薄磯は母の実家で、夏休みや正月に親せき一同が集まり、にぎやかに過ごした懐かしい思い出がある。友人と海水浴やバーベキューを楽しんだこともあるし、高校生のころに母が祖母との同居を決め、一家で薄磯に移住してからは海がより身近になった。 結婚後も近くのアパートに住み、姫花さんと長男が誕生。実家からほど近い現在地に新居を求めた。震災が起きたのは新居の「瓦上げ」を行ったその日の出来事だった。後日、娘が津波に巻き込まれて亡くなったことを知った時、泳ぎが不得意だった娘を思い、とっさに「冷たかっただろうな」と思った。以来、「娘を連れ去った冷たい海」という印象が頭から離れない。「近くに行っても堤防まで。自ら海に近づくことはなくなりました」。 震災直後は精神的な激動期。姫花さんが描いた灯台の絵を見た京都市在住のデザイナー竹内明二さんの提案を受けて、震災の経験を伝える「姫花ちゃんの黄色いハンカチ」が誕生した。悲しみにくれながらも必死に仕事をし、男の子2人を育て、ハンカチの販売や売上金の寄付に奔走した。デザイナーになりたかった娘の夢をかなえたい一心だった。 3年ほどの月日が過ぎようとしたある日。震災の年に生まれた次男と一緒に堤防付近を散歩していると「こっち、こっち」と手を引かれ砂浜に下り立った。久しぶりの海。足裏に砂浜の感触を味わいながら、この日、少しだけ海への抵抗感が和らいだ。それからは、知人を案内するときなど限定的だが海に降りられるようになった。そして、少しずつ「娘の不在」が家族の日常に馴染んでいった。 いまも娘のことを考えない日はない。テーブルに娘の食事を用意して一緒に食卓を囲む習慣も、娘の部屋もそのままだ。10歳のままの姫花さんと一緒に、静かに15年の月日を積み上げてきた。 15年が長かったのか短かったのかはわからない。しかし、気づけば2人の息子はあっという間に貴さんの身長を追い越していった。毎年3月11日前後に自宅に遊びに来てくれる姫花さんの同級生たちは、今年25歳。昨年は初めて出産の報告を受け、腕に赤ちゃんを抱かせてもらった。「何も変わらない日々ですが、確実に時間が過ぎているのだなぁと感じました」。 ふらりと歩いて海を見る。この日の海は薄曇りの空を映し、あいまいで優しい色だった。 ◇ ※2011(平成23)年に販売をスタートした「姫花ちゃんのハンカチ」の販売数は、15年で1万4千枚、売上から捻出している災害義援金の総額は340万円を超えた。現在も塩屋埼灯台下の2店の土産物店と、湯本のコミュニティカフェ「フリーノット」で販売中。
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